クゲヌマラン   ラン科 多年生

 距が明らかではない、苞が花序の上に出ない、ので「クゲヌマラン」ということにしておく。
 「絵とき検索表」によれば、
 下の1〜2個の苞が花序の上に出れば、ササバギンラン(距は明らか)
 苞が花序の上に出なくて、距が明らかで、葉が大きければ、ギンラン
 苞が花序の上に出なくて、距が明らかで、葉が小さくて時には鱗片状になるなら、ユウシュンラン
 が、  クゲヌマランの分布域が、「北海道植物図譜」に依れば、胆振地方以南の太平洋側で産地はきわめて少ないとか、「日本の野生植物」に依れば、本州四国の海岸の砂質のくろまつ林下にはえるとか。岐登牛山のような北海道の内陸部にも分布するのかどうだか、ちょっと心配。ど素人の限界ということで乞うご容赦。

(追記)  原 松次「北海道植物図鑑」(噴火湾社 1985)では、エゾノハクサンランの別名としている。写真標本(月形町で撮影)は本サイトのものとそっくり。
 「北海道植物教材図鑑」(北海道新聞社 1977)では、ギンランとしているものの写真がそっくり。
 「日本の野生植物」(平凡社 1982)では、上記記述の他に、分布は太平洋側に限られている、とか、ギンランの種内変異と考えられる、と、ある。
 「新北海道の花」(北海道新聞社 2007)では、ギンランの変種とし、北海道(空知地方以南)、本州(中部・北部)に分布としている。なお、本書の前身「新版北海道の花」(北海道新聞社 1986)では採録していない。
  ギンランの変種としてエゾギンランというものもあるらしい。「北海道植物図譜」には、「唇弁の中央の裂片が、浅く3裂する型をエゾギンランとして区別する見解がある」との記載あり。
 北方山草26(2009)に「北海道に分布するクゲヌマラン類似植物」という記事がある。北海道大学総合博物館に所蔵されるクゲヌマランに類似するものの少し雰囲気の違う標本1点に対して蘊蓄を傾けた報告。「・・・以上の理由から、この植物は既知のキンラン属の分類群と異なる可能性が高いが、1点の標本に基づく評価であることが問題である。もし複数の地点で同じ形質の組み合わせを有する個体が出現しているとすれば、独立した分類群と判断することができる。」としている。その後のことはもちろん知る由もない。
 鳥取県立博物館研究報告49(2012)にある「鳥取県において新たに分布が確認された5種の植物」では「種の特徴は、@ギンランにみられる明瞭な距がなく、A葉はギンランのそれと比べると細長く形態的にはササバギンランに近いが、ササバギンランの葉は薄く軟質であるのに対し、クゲヌマランの葉はやや皮質で鈍い光沢がある、などの点で区別できる。また、下唇中央部が鮮やかな黄橙色を呈する個体がクゲヌマランには多いように思われる。注意したいのが、ギンランにも距が発達しない個体も発見されている点である。距の有無のみでギンランとクゲヌマランとを区別できないので、葉の形状など複数箇所の形態的特徴から同定を行うべきである。」と報告されている。「ギンランにも距が発達しない個体も発見されている」とは、とほほ。
 結局、玄人筋でも、はっきりしたことは書けないようで、(現在ではどうだろうか、調べてみる気にもならないんだけど)、素人ならではの思い込みも仕方ないのかもしれない、ということで、おしまい。

 「YList110717」ではクゲヌマランはギンランとは別種としている。変種扱いはsynonymだと。エゾギンランはギンランの変種として標準だとしている。
 YList(2019年5月26日)では、エゾギンランはクゲヌマランの別名、エゾノハクサンランの記載は無し。これら変遷の背景については皆目見当つかず。

 このクゲヌマランらしき植物群が本年は目立っている。増殖過程にあるのかもしれないし、なにかの都合で持ち込まれてきたものかもしれない(正確にはわからないけど、ユーラシアだとかに広く分布するらしく、外来し定着途上のものもあるそうで)し、よおわからんわ。web上をさまようと目が回り、迷子になる。


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展望閣への車道脇 20080605


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距の露出が明か、とは見えない。20100612


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